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ゆったりと微笑んでいる偽ロイに、エレノアはやや引き気味で訊ねる。
「と…特殊二親等を持つ転生魔族…ですのよ…?(汗)」
「一等貴族の血統を守るのと同じくらいに、モスラ公爵家にとって大事なのは、蛾の属性の保守です。
純血魔族の場合は、相手の属性によって子供が蛾の属性ではなくなってしまう事が有ります。
しかし転生魔族の場合は、神代から続くモスラ公爵家の血を覆せるほど属性に対する魔力抗体は現れません。
我ら純血貴族にとっては、なまじ歴史を重ねてきた属性を乗っ取られる危険性が有る名門より…。
アルス・マグナの異能を発現するか、ソロモンになるか、グランドスラムになるか…。
そのいずれかの転生魔族の方がよっぽど都合が良いでしょう?
なので国許の母も、兄が見初めた者がアルス・マグナやソロモンになるかは運任せですが、グランドスラムになった場合には当主配偶者の候補者として考慮すると申しております。
ただ…まぁ…、その為には…最上級クラス者を第一接合者にしなくてはなりません…。
あの兄が…浮気を許さなくてはならなくなります…。
……………。
無理でしょうね」
「では、今回のご婚約は…?」
「私は破談になると見ました。
ですので、エレノア夫人さまの子爵家でも御懸念には及びません」
「そうですか…。
ヘルブリュン郷の領主でもあられるモスラ公は、我が一族の産みの母であるヘルブリュンさまの名を伝える地のご領主。
及ばずながら、私はピアニストとして研鑽を積んだ者です。
モスラ公が御成婚あそばす際には、是非にお祝いの演奏をさせていただけたらと願っております。
モスラ公爵家の更なるご繁栄、エンディケ・エンディコット統一伯王の末裔も願っていたと…。
どうか、御一族にお伝えください」
「清き音色の透の魔女さまに、もったいない御言葉を賜りました。
必ず我が一族に伝えましょう。
………………。
時に、エレノア夫人さま?」
「はい。何でしょうか?」
「私がこちらにご挨拶に上がりますのに、兄から書状を預かってまいりました」
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