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声のするほうへと顔を向けた。
誰か立っているのは分かったが顔は見えない。
近づいてくる人物を見据えながら傍らの刀と着物を抱きしめる。
「女か…?」
近づくにつれて月明かりのせいか顔が見えてくる。
想像した通り40歳は超えているであろう男の人。
それでもかっこよさが伺える。
「誰…ですか?」
私はそっとその人物に問いかけた。
「儂か?…芹沢鴨」
せりざわかも?
この男はそう言ったのか?
こんな運命がどこにあろうか…。
私の身体は歓喜に震えた。
「私は天野 美弥(アマノ ミヤ)です。…芹沢様、後生です…どうか、どうか…私を貴方の元に置いてくれませんか」
私は刀を抱きしめ縋るように芹沢さんを見た。
芹沢さんは何故だか面白そうに私を見る。
「くくっ…良い目だ。いいだろう、連れて行ってやる。丁度お梅の話し相手が欲しかったところだ」
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