異能の力

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焼ける平原、焦げる人の臭い。 昨日まで青々と広がっていた筈の草原は今、男の眼前に死の海を映していた。 漆黒の空にも焼け野原が燃え映り、宛ら男の心情を思わせる紅い闇はそこに向かい合う二人の男を包み込む。 「無能力者にしちゃあ、お前も頑張ったよな。褒めてやるよ」 燃え盛る炎の中心に、しかし何事も無いかのように立ち、そう皮肉る男。 辺りを覆う炎を髣髴とさせる赤髪に、やはり赤いその瞳で嘗め回すように見詰める。 「・・・」 片や対峙する大男は、赤髪を殺すと言わんばかりに目から殺気を零し、わなわなと震える拳を握り締める。 その巨体は凡人なら致命傷ともいえる火傷を負いながらも尚、力強くそびえ立つ。
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