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高校入学を前にした三月。
外には既に桜も蕾をつけ始め、冬の冷たい風が優しい暖かみを帯びたものに変わった。
雲一つない晴天の下、俺の自宅で白いベッドに包まれながら美月は告げた。
「―――直哉」
「ん?」
薄い桃色の唇が綺麗なソプラノを奏でる。
俺の名前を呟きながらシャツの裾を引く姿はいじらしく可愛らしい。
美月が身に纏うのは白い掛け布団一枚。そして申し訳程度に着たシャツの下から覗くキャミソールとパンツのみ。
魅惑的な黒い瞳を愛しそうに細めた美月は、俺の肩にしなだれかかりながら言葉を続けた。
「―――ね、しよ?」
豊かな双丘を俺の腕に押し付けながら美月が誘う。
耳にかかる吐息はこそば痒いが不快感はない。
むしろ男子たる者の情欲を掻き立てる。
下半身に伸びる美月の指に己の指を絡め、俺は流れるような美月の髪に頭突きをかました。
「アホ。いいからさっさとコレを解け」
ジャラン、という金属音が部屋の中に響く。
現在、俺の両手の自由を奪っている手錠が不快な音を鳴らせてその存在を主張する。
「…痛い?」
「痛くはないが、激しく貞操の危機を感じざるをえない」
「ならいいじゃない」
絡めた指を愛しそうに美月が撫でる。
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