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結局、今の俺に出来ることなんざ高が知れてる。それに、今のキレてるコイツに何を言っても聞きゃしねー。
「好きよ、直哉。大好きよ。私は貴方の為なら何でもするわ」
再び絡められた指が豊かな膨らみへと俺の手を導いていく。
「だから貴方も言って。私のことが好きだと、愛してると言いなさい」
告げられたのは有無を言わせぬ強い意思。
見上げた美月は、誰にも負けないぐらいに美しく、また凛々しかった―――――……
◇
「―――と、いうような本を作ってみたんだ!」
「死ね」
昼休み。
催眠術にしか聞こえない授業をなんとか耐え、漸く食事にありつけると思った矢先、この馬鹿者の出現によって食事は更に引き延ばされることになった。
クラスメイトたちは既に各々この暑っ苦しい中、元気に校庭や体育館へボールを片手に走っていった。
全国の高校生を代表するかのような健全なクラスメイトを見送りつつ、俺は頭の中に虫が湧いているとしか思えない馬鹿の持ってきた本を読んでいた。
「えぇっ!?そんなに酷い!?せっかく昨日、徹夜して作ったのに!?」
「こんな馬鹿みたいなもんを作るために徹夜なんかしてんじゃねーよ!?」
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