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「あ、あれ見て下さいっ」
慌てたような声が聞こえたと思えばすぐ近くに獣の匂いを感じた。
バキッと枝が折れたような音の方を向けばそこに居たのか私たちより断然大きな身体の狼。
隣から怯えたような声が聞こえる。
まあ、こんなに大きな狼が居たら流石に怖いよね。
私も平気そうに見えるかもしれないけど実際怖い。
「魔物だっ…!」
「にっ、逃げなきゃ!」
倒すとか何とか話してたけど私たちはまだ5歳。
小さな魔物でも倒せるわけがない。
我先にと狼から逃げるように来た道を走って行く。
……私を置いて。
『フンッ、不様だな』
「そうだねぇ」
『……娘、我の言葉がわかるのか?』
「うん、そうだよぉ?」
私は魔物と喋れるから逃げなかったわけじゃない。
逃げようとしたけどサラに押されて尻餅ついてしまっただけ。
……帰ったら覚えてろ。
『フッ、面白い娘だ。 我の姿を見ても逃げずに話すとは』
「押された時に足挫いただけだもん」
やっぱり神が言ってたように魔物って頭がいいんだ。
魔物にとって人間の子供は人間にとっての虫と同じなんだろうね。
いつでも殺せるって事か。
『娘、口調は作らなくてよいぞ』
「ありがと、名前なんて言うの?」
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