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「やっ・・・だめっ・・」
「ご・・ごめん!
でも、イルニス、君が好きなんだ、君が僕を嫌いなら、何もしないよ?・・僕が嫌い?」
「嫌いじゃないけど・・無いけど・・・でもヒーストリック、私困るわ」
「僕が君より力が劣るから?それとも他に誰か好きな奴が?」
ヒーストリックにそう言われてイルニスの脳裏にあの夢の彼が浮かんだ。
「御免なさい、そう言う理由じゃ無いのだけれど、今ちょっと考えられないの」
「ゴメン・・・イルニス、僕、皆が君を姫って呼ぶ事に少し焦っていたのかも知れない」
ヒーストリックがイルニスから視線を外して、下を向く。
「ヒーストリック・・・実は・・話っていうのが・・・」
イルニスは、この二人の緊張感が耐えられず、話を逸らそうと思い切って あの夢の話をする事にした。
「じゃあ・・・なんだい!? イルニスは・・・君は魔王に約束してしまったと言うのかい?
馬鹿げてる!! 夢だぜ?夢!」
「そうなんだけど・・・縁ママもはっきりそう言っていたから・・・」
「例え、そうだったとしても、魔王などに「はいそうですか」なんて、君を渡せるものか!」
その時だった。
大地が揺らいだ。
地震だ、それも大きい。
イルニスがソファの背にしがみつく。
だが、地震は収まるどころか、一層大きく揺れる。
ヒーストリックの顔色が変わる。
「変だ・・・! イルニス、ホールへ!」
ドアが自動で開かなかったので、手動でこじ開け、二人ホールへ走っていくと、殆どのメンバーが集まっていた。
「姫!ヒース!」
二人が走りこんで来たのを所長が見て、少し安堵の表情を浮かべるが、すぐまた硬い表情に変わる。
「みんな・・何これ・・・?・・何が起きるの?」
イルニスが辺りを見回し所長に問いかけると、縁が駆け寄って来て、抱きしめてきた。
「姫!・・来る! 皆、中央に集まれ、気を集中せよ! 姫を護るのが我々の使命だ!」
所長が皆を促した。
ホールに緊張感が一気に高まり、皆、イルニスを囲うように背を向け、円陣を取る。
地鳴りの様な大音響が響き、突然床の大理石が粉々に吹き飛ぶ。
吹き飛ぶ石の破片が竜巻の様にホールに渦巻き、その中央に何者かが姿を現した。
音がぴたりと止み、吹き飛んだ床の破片が、時を止めたように空間に静止している。
全員その場に凍りついたようにぴくりとも動けなかった。
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