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イルニスは何かに頬を撫でられた様な感触に目が覚めた。
起き上がると軟らかなベットの上なのに気がつく。
辺りを見回すと、既に夜になっているらしく、小さなランプが質素な部屋を照らし出している。
ベランダが開いていて風が吹き込んで来る。
「ここ・・・どこかしら それに・・・この風、なんていい香りなのかしら・・・」
立ち上がりベランダに出てみる。
空は暗く街灯りなど見えない。
そして、その暗い空を見上げて、目を見張った。
宝石を散りばめたようなキラキラと輝く光が天空を埋め尽くしている。
「何・・・あれ・・・? もしかして、あれが 星?・・」
何かで見た画像とよく似ている、それも忘れるほどの昔だ。
現代は、分厚いドームのガラスに遮断されている上に、汚れた大気で星など殆ど見えない。
その時、ざわざわと音がして、強い風が吹き付けてきた。
「きゃっ・・!」
思わず、びっくりして後ずさりした時、ベランダの段差に躓き転んでしまった。
次の瞬間、部屋のドアが大きく開いて、男が飛び込んで来て、素早く抱き上げられた。
「!!・・・」
「どうした!?」
さっきまでの出来事は夢ではなかった。
素早く駆けつけて抱き上げてくれたのは、服装こそ違っていたが、紛れも無くあの“魔王”だった。
そっとベットへ降ろしてくれる。
「どこか痛くしなかったかい!? 何があったんだ!?」
彼が私の顔を覗き込み、肩や膝を擦る。
本気で心配してくれている。
彼のあまりの優しさに驚き、直ぐに言葉が出てこなかった。
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