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「大丈夫、そんな事気にしなくても。俺を受け入れるだけでいい、それで一緒に生きて行ける」
彼の腕が躯を包み込み、優しく抱き寄せられる。
思わず躯を硬くしてしまう。
「いい子だ、そんなに硬くならなくていいよ。今日はこっちに来たばかり、何もしないよ、疲れているだろう?」
辛うじて小さく頷くことに成功する。
「よしよし・・・」
彼は大きな体にすっぽりと抱きかかえる様にして、優しく髪を撫でるのだった。
「ああ・・・イルニス・・・本当に可愛い・・・その美しい銀の髪、ブルーグレイの瞳・・・全部俺の物だ」
イルニスもやがて、彼のその優しい抱擁にいつの間にか緊張も解け、大人しく身を委ねていた。
「夢に出て来たのはやっぱり貴方?」
「そうだ。
君をこうして胸に抱ける日を永年待ち続けた。そして今日漸くそれが叶った。
寝ている君の夢によく入って行ったことも数知れない。
そのイヤリングも良く似合っている・・・昨日俺が誕生プレゼントに送ったものだ」
幼い頃からの足長叔父さんは、魔王だった・・・。
「じゃ・・・最近良く見ていた夢も・・・」
「そうだ、俺のこの手の感触を覚えているだろう?」
大きな手が頬に添えられる。
大きいけれど、決してごつごつしてはいなくて、心地いい。
男の人にこんなに密着して触れられるのは初めてのイルニスだった。
思わず俯いて小声で返答する。
「・・・ぅん・・・」
「フフ・・・いい子だね。
今日はもう君には遅い時間だ。俺はいつも遅いがね・・・もうお休み?なにも心配しなくて良いからね?
ぐっすりお休み。
・・・お休みの・・・キスだけしていいかい?」
「え・・・」
ノーと言えずにいると、彼の大きなその手に頬をまた包まれた。
金の瞳が細められる。
彼が唇を合わせてきた。
ファーストキスだった。
ヒーストリックに求められた時は、嫌だったが、彼とはそう思わなかった。
甘く優しい口付けにイルニスはすっかり身体から力が抜けてしまう。
“ああーーーイルニス・・なんて甘い香り・・軟らかい・・・震えて・・・可愛い・・”
それ程長い時間ではなかったのだろうが、イルニスにはとても長く感じられた。
崩れるように横になつたイルニスにタオルケットをそっとかけてくれる彼。
「側にいると・・・君の全てを今欲しくなる・・・俺は今夜は別の部屋で休むとしよう・・・」
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