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“え・・この部屋で一人?置き去り?”
思わず首を横に振ってしまう。
立ち上がりかけた彼の視線が、固まる。
「嫌・・・一人にしないで・・・心細い・・」
言ってしまってから、自分の大胆にも取れる言葉に自ら動揺してしまい赤面する。
タオルを顔半分のところまで手繰り寄せ、彼の顔を見返してみる。
すると彼は大きな溜息を一つついた。
「いい子じゃなくなったな・・・困った子だ。
やっと手に入れた花嫁を目前にして一晩お預けは拷問だ」
また首を横に振るイルニス、泣きそうな顔をしている。
「・・・やれやれ・・じゃあ、ここに居て君が眠るまで付いていてあげよう。それならいいかい?」
コクリと頷く。
「じゃ、ちょっと待ってて・・・」
彼が部屋を出て、ちょっとしてから何か飲み物の入った瓶とグラスを持って戻って来た。
ベットの脇に腰掛け、グラスを煽りながら左手で優しく髪を撫でてくれる。
「お休み・・・」
時々目を開けると、彼は何とも言えない優しい瞳で見つめてくれていた。
“この人は・・どうしてこんなに私に優しいの?・・・きれいな琥珀色の瞳・・・”
こうしてイルニスの初めての異世界での夜が更けていった。
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