旅行

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「体調崩して倒れてるのかと思った」 玄関のドアを開けた時の第一声がこれ。 月曜日の朝7時。 けたたましく玄関のチャイムが鳴らされる。 私はかなり朝が弱い。 と言うか一度寝たら10時間くらい起きれない。 親睦会の後徹夜をして朝方に帰宅したのだから しばらく起きるつもりはなかった。 10分位は無視しつづけたけれど チャイムが鳴りやむ様子はない。 私はあまりのうるささについにムクリと体を起こした。 これでセールスだったら蹴り飛ばしていたんじゃないかと 言うくらいこの時の私は機嫌が悪かった。 文句の一つでも言ってやろうと玄関のドアを開けると テンションの高い第一声が聞こえたのだった。 そこには赤いヒラヒラしたスカートにブラウスを着た秋が立っていた。 黙っていたら本当にどこかのお嬢様みたいなんだけど・・・。 私はまた心の中でため息をついた。 秋は口端を吊り上げてニヤリと笑っている。 この顔・・・ また何か企んでいるな。 朝からテンション高く思ってもいない心配そうなセリフを ドアを開けた瞬間に吐く秋。 「朝から何かな?」 ニコリと笑顔を浮かべながら言ったけれど 私は起こされた怒りを抑えきれないひきつった笑みを浮かべていただろう。 秋は私が一度寝たらなかなか起きないことを知っている。 知っていて朝からわざと押しかけてきているのだから ほんとたちが悪いと思う。 ひらりと中に入るともうソファに座ってくつろいでいる。 アイスティーをいれて秋の前に出すと 一気に半分まで飲み干して秋は言った。 「ねぇ、来未。サークルの皆で旅行行かない?」 「・・・いや」 私が即答すると口端を吊り上げて笑ったままの秋が ズィっと顔を近づけてきた。 「もう場所も確保しちゃったんだよね~。行くよね?」 ちなみに、行くと言うまで帰らずに私を寝かさないからねと 後づけた。 「行きます」 言うと私は一気に脱力した。 本当に秋にはかなわない・・・。
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