序説

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ここ、砂一大学は元は宗教系の大学だ。 最近色んな学科が特設されたため新しく 学舎を建て一般学科は一般塔、宗教系学科は 宗科塔といわれ学科ごとに区別されている。 私はこの砂一大学の民俗学・占術学科1年生。 主に占いの勉強をしている。 私の家は代々皆占いを生業としているため 一通りのことは知っているけれど 私には足りないものがあるらしい。 両親は私にこの大学を勧めた。 私は悩んだけれど 結果ここに入学することに決めた。 少しずつあたたかくなり 木々にも青々とした葉が付き始めたころ 同じ学科の友人 山南 秋<さんなん あき>に あるサークルに誘われた。 それは、小説研究サークル。 と言っても小説研究とは名ばかりで 「呪いは本当に存在するのか?」と言うことを 調べるのが主な活動内容だそうだ。 オカルト研究サークルとかだと 人が入らなそうなので表向きは 小説研究サークルにしているらしい。 いくら名前を変えても 誰も入りそうにはないと思うけど そこは、あえて追及しないでおこう。 「胡散臭いから嫌」 私は笑顔を浮かべながら きっぱりと断ってみた。 「入ってもみないで断るなんて 視野が狭いよ?」 秋はショートヘアーのオレンジ懸かった茶髪が 顔にあたるのを手で抑えながら 私に顔を近づけて言う。 彼女、秋は中学時代からの友人で 基本的にさばさばしていて言いたいことは ハッキリ言うタイプなので付き合いやすく 私にとっては一番気の合う人物であると言えるが 何分今の状況では買うまで引かない 悪徳セールスマンみたいだ。 「入るよね?」 傍から見ると物腰柔らかに聞こえるかもしれないが 実際は全然違う。とても威圧感があるのだ。 有無を言わせない空気が漂い 途端に居心地が悪くなる。 「あ、そうだ。私バイトの時間・・・。」 さっと帰る準備を済ませて秋に背を向けると 強く肩をつかまれた。 恐る恐る振り返ると秋の顔が間近にある。 「入るよね?」 そういう秋の顔は口端を吊り上げて 笑顔を作っているが目が全然笑っておらず またあの有無を言わせない 空気が漂ってきた。 私は観念するとやや脱力しばがら コクリとだけうなずいておいた。
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