二章『壁と壁の無数猫』

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そんなことを考えているとまた同じように壁の方からカリカリと音がする。  まったくなんなのだと私の部屋に戻る。  すると青年が足元の壁に小さい穴があいてると言った。     前に足があたり穴があいたという記憶が蘇った。 そう答えると青年はそれならばこの穴を少し広げて壁の内側を見てみようという。 私もそれは良いアイディアだと答え、おもむろに壁の穴に指をいれて穴を広げてみる。  やがて拳が入るほどに大きくなった穴から覗き込むと何か動くものが見えた。  それがなんなのかを凝視しようとするとその何かが近づいてくる。  驚いた私が穴から顔を離すと、その何かが穴から這い出してきた。     それは猫だった。  まだ生まれてそんなにはたっていないだろう。 小さなその子供の猫は橙色と白と黒の模様で可愛くニャーと鳴いて部屋のなかを走り回る。  なんだ猫だったのかと青年と私がホッと視線を合わせる。 また件の穴から子猫がまた出てきた。   今度は先ほどの猫とは違い、雪のように白い子猫だ。  壁の内側で猫が子供を産んだんですかねと青年が言うので、おそらくそうでしょうと私も答えた。  
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