二章『壁と壁の無数猫』

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すると今度は連続で三匹猫出てきた。  また先ほどの子猫たちとは違う毛色の猫だ。     随分と産んだんですねと青年がまたまた言うので、私もそうですねと答えた。  そんなことを言っていたら三度子猫が数匹でてきた。  それらが部屋の中に入ってきた瞬間にまた数匹の猫がはい出てくる。  それも終わるとまた同じように数匹の子猫が出てくる。   部屋の床は何匹もの子猫で埋め尽くされていく。  猫は好きだがあまりに数が多い。 しかもそれらが壁の内側にいたという事実でなんだか気持ちが悪い。  思い切って更に壁の穴を広げてみる。 今度は人が這って入れるくらいに穴を広げ、また覗き込む。  その間にさえ開けた穴の内側からは何匹もの猫の鳴き声が響いている。  壁の内側は広い空間だった。  いや、正確に言うと私の部屋の壁と青年の部屋の壁の間にもまた同じように部屋が一つ存在しているのだ。  部屋の中は薄暗い。 誰かが住んでいたかのようにテレビやベッドがある。 洗濯物を部屋干ししていたのか? 洗濯紐が部屋の端から端までかけられており、そこにシャツやらズボンがきれいにかけられていた。  そして床には無数の猫が敷き詰められているかのように存在し、それらが押し合いへし合いしながらニャーニャーと悲鳴のように鳴いている。  部屋のあちこちには猫の死体がある。 それらを餌として食べている猫やたくさんの妊娠した猫がボコボコと子猫を産んでいる。  そしてたまに餌を食べ損ねた猫がその生まれた子猫を捕食している。  その間にさえ妊娠した猫たちはニャーと鳴きながらボコボコと子猫を生んでいる。 「きっと税制対策か何かで部屋を一つ埋めたんでしょうね」  明るい声で言う青年に、 「そうだね、理由がわかってよかったよかった」  となぜか私も朗らかに答えた。   そこで目が覚めた。  最近はこんな夢ばかり見る。
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