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後ろに倒れてしまいそうになるが、それを真野君が支えてくれたから何とか免れた。
でも、顔を上げたらびっくりするくらい顔の距離が近くて、私は思わず硬直してしまう。
真野君も少し驚いたのか、ぎょっとしたような顔をしていたけれど、私が体制を整えるまで待ってくれている。
何とかして戻そうとするのだけれど、抱きついている愛莉がなかなか動いてくれない。
おっ、お願いだから、早く離れさせてっ!
き、緊張する……っ!
ガチガチになっていることに気付いたのか、真野君はそっと手に入れていた力を抜いてくれた。
でもその所為で、私は思い切り真野君の体に凭れ掛かるような形になってしまった。
顔を真上に上げると、真野君の硬いお腹に頭が当たってしまう。
まるで真野君に後ろから抱き締められているようで、恥ずかしくて仕方ない。
「あのっ、真野君ごめっ……ちょっと、愛莉っ、早くどいて…っ!」
「別に、今は好きなようにさせておけよ。
弱ってる時くらい、甘えさせてやればいいだろ」
「や、だって、真野君これじゃ動けないんじゃ……」
「どうせ他に客なんていないし、何ら問題はないと思うけど」
さらり、とクラーロに失礼な発言をしながらも、真野君はじっと私の体重を支えながら立ってくれていた。
うぅーっ、と呻き声を上げながら、私は愛莉の頭をそっと撫でて自分を落ち着かせようとした。
傍から見れば、この光景はまさしく滑稽だ。
仕舞いには、愛莉は疲れ果てて寝息を立て始めてしまった。
ぎょっとして私は何度も彼女の体を揺すってみるが、気持ちよさそうに身じろぐだけでまったく起きる気配がない。
私はもう無理だと思い、とりあえず現状を真野君に報告しようと上を向いた。
「……あの、真野君。
愛莉が疲れて寝ちゃったから、しばらくこのままになっちゃいそうで。
その、ごめんなさい」
「……。忙しい奴だな。
泣いたり、文句言ったり、眠ったり」
「え、あ、う……」
「気にするな。もう少し、そうしといてやれ」
いつもより少し穏やかな声で言われ、私は大人しく言うことを聞くしかなくなった。
未だに私は、真野君に体を預けたまま愛莉に抱き締められている。
私が「でも」と言うと、真野君は「いいから」と気を遣わせまいとしてくれた。
すると、突然。
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