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恋愛って、なんだろう。
恋ってなに?
そんなこと、経験ゼロの私には、解りっこなかった。
知っていることなんて、少女マンガの世界でのことばかり。
周りの話を聞いていれば、あんな綺麗事ばかりをつらつらと並べたことは、現実には有り得ないんだって解る。
でも、やっぱり憧れたりもする。
あんな、ドラマみたいな恋をしてみたいって。
でも、そんなの無理だってこともちゃんと知ってる。
度は弁えてる。
だって、私こと与那代嘉乃(よなしろかの)には何の取り柄もなくて、色々と冴えない女だし。
見た目だってよく見積もっても下の上だと思うし、性格だって根暗だし。
とてもじゃないけど、誰かに好きになってもらえるような大それたものじゃない。
私はしっかり現実を見てしまっているから、夢見がちでも溺れ切ってはいないんだ。
でもたまに、私って必要な存在なのかな。
なんて、馬鹿なことを考えてしまうんだ。
「ねぇ、カノ。唐突だけどさぁ、好きな人とかいないの?」
「えっ?」
本当に唐突だ、と思いながら、私は親友である麻木愛莉(あさぎあいり)の顔を見つめた。
彼女は私なんかと違って、超絶美女という言葉が大変似合う美少女だ。
容姿端麗だし、才色兼備に頭脳明晰、そして八方美人ということなし。
これ以上の素敵な女性はいないだろうと、私は思ってる。
「いないとかいう前に、恋がどんなものなのかも、よく解らないから」
「うーん、そっかぁ。でも、今のうちにたくさん経験しておいた方が良いよ?
大人になってから色んな男に騙されたりしないように、男を見る目を養った方がいいし」
「なんか、発想が少し悲しいよ……」
冷静に語る愛莉に、私はつい肩を竦めながら苦笑する。
強ち彼女の言うことも否定し切れないから、それ以上のことは何も言えなかった。
愛莉は私なんかとは違ってモテるし、恋愛経験もそれなりに豊富だった。
高校一年生の冬になる今までで、中学時代は五人、高校生になってからは一人と付き合っていた。
今ではフリーになってしまっている彼女だからこそ、恋すらしたことのない私に言いたいことは解る。
ちゃんと男は見て選ばないと、あとで後悔するよって。
「カノは可愛いんだから、変な男に引っ掛からないようにしなきゃ駄目だからね?」
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