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「そんなことないよ、私みたいなのを好きになる人なんて絶対いないし……。
可愛いっていうのは、愛莉と楓(かえで)姉ぇみたいな人のことを言うんだよ」
「あー、葉月(はづき)さんかぁ。
あの人はもう別次元だよね、世界中の男が放って置かないほどの超絶美人!」
「ハハ、言えてる……」
超絶美少女なら愛莉だけどね、とか心の中で思いながら、私は小さく笑った。
目の前では、愛莉が楓姉ぇのことを思い出して目を輝かせている。
楓姉ぇは私の従姉妹で、小さい頃から実の妹のように可愛がってくれていた。
私も本当の姉のように慕っていたし、幼い頃から「大きくなったら楓姉ぇみたいになりたい!」と口癖のように言っていた記憶があるくらい。
同性の私達から見ても、一人の女性として大変魅力のある人だった。
モデル並みの長身にメリハリのある体系、綺麗なロングのキャラメル色の髪に、大きな真ん丸い瞳。
初めて会った時なんて、外国のお人形さんなんじゃないかって思ったくらいだ。
そんな人と姉妹のような関係でいられるだけで、私にとってはものすごく鼻が高いことなんだけど。
実を言うと、今日その楓姉ぇと会う約束をしている。
何やら、私に頼みたいことがあるらしい。
言われたら素直に聞いてしまうだろうから、断るつもりも更々ないんだけど。
会いたいから、わざわざ即答せずにいた。
まるで、私楓姉ぇに恋してるみたいでおかしいな。
そんなことを考えながら、私は早く放課後になってくれないかと心待ちにしていた。
すると、愛莉が横目に私の二つ左隣の席の男の子の話をしはじめた。
「今思ったんだけど、カノはあの人と話したことある?」
「あ、真野(まの)君のこと? ううん、一度も話したことないよ。
それに、話してるところも見たことないし、声も聞いたことないかも……」
私は話しながら、ちらりと机で本を読んでいる真野君の様子を盗み見ていた。
こんな言い方をすると、変な誤解を招いてしまいそうだけど。
でも、別に真野君に対して特別な感情を抱いたことなんて一度もなかった。
青みを帯びた綺麗な黒髪は、今時の男の子には珍しく一切手を加えていない。
やや丸めなスクエア型の眼鏡を掛け、顔はいつも無表情。
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