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少し眉間にしわを寄せているところは見るけれど、笑った顔なんて一度も見たことがない。
それどころか、さっきも言ったように声すらまともに聞かない。
私が彼に興味がないんじゃなくて、彼が周囲に興味ないオーラを出している気がするんだ。
だから誰も必要以上に近付かないし、その所為で真野君は「孤高の一匹狼」みたいになっている。
一人で寂しくないのかな、とか私は思うけれど。
真野君はそういうことを考えたりしないのかな?
「真野は駄目だからね、カノ!」
「へっ、な、なんでっ!?」
「だって、あんな何考えてるか解らない奴じゃ、普通の恋愛なんて出来そうにないもん。
多分、カノにはレベル高すぎるし。
あと、何考えてるか解らないってことは、自分のことを大切にしてくれてるかも、本当に一途に愛してくれてるのかも解らないってことなんだよ?」
愛莉の口から勢いよく飛び出してくる言葉達に、私は委縮して小さくなりながら頷いていた。
きっと愛莉は似たような経験があるから、私にはそうなって欲しくないからここまで言ってくれてるんだろう。
でも、それなのに素直に心から「うん」と言えない私がいた。
それに、愛莉は怪訝そうな顔をした。
「カノ、まさか……?」
「や、ちがうよ!?
ただ、真野君って本当にそういう人なのかなって、思って」
必死に弁解する私を、愛莉はまだ怪訝そうに見つめていた。
でも、私は嘘なんて一つも吐いていないから、まっすぐ目を見て話す。
それからしばらくの間、私の中では真野君のことがぐるぐると回っていた。
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