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体格的には園長先生と同じぐらいなのに物凄く大きく感じる。
照明が少し暗くなるとその男はギターを手に持った。
手拍子が完全に終わるとギターサウンドが鳴った。
シンは目を見開き固まっている。
電気が背中を駆け巡る様なとてつもない衝撃が走った。
演奏が終わるまでの約一時間の間シンは食い入るようにずっとステージを眺めていた。
大人達からすると地元出身のアーティストとはいえ、あまり目立った活動もなく、知名度もあまりないアーティストの訪問。
たまにある定期的なイベント位の物だった。
翌日、普段は1日何もしないシンが珍しく朝早くから起きて学園の倉庫で何かを探している。
先生が気付いた。
シン君何探してるの?
あのっ、楽器ってないの?
シンが喋った。
少し驚きながらもシンに答える。
ごめんね、楽器はないんだよ。
どうしたの?
シンは一生懸命伝えた。
昨日電気が走った事。
もう一度あの音に触れたい事。
自分の手であの音を出してみたい事。
今まで何も喋らなかったシンがここまで自分の思っている事。
感じた事を伝えているのに驚きを隠せない。
分かった!なら先生なんとかしてみる!
その言葉に今まで笑顔など見せた事のないシンが凄い笑顔で頷く。
うんっ!ありがとうっ!
物凄く可愛い笑顔だった。
先生は園長先生相談した。
これまでのシンを知ってる園長先生も驚きを隠せない。
園長先生は自分も趣味でギターをしている、音楽の力を理解している人だった。
この機会を逃してはいけないと園長先生は快く承諾してくれた。
翌日、子供のおもちゃ代わりには似合わないかなり高価なギターがシンに与えられた。
園長先生のおさがりだ。
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