序章

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君と同じようで全く違うアイツ。それなのに私はいつまでたってもアイツから離れられない。 依存してしまったから。 アイツと居れば君を無くした現実を忘れる事が出来た。 アイツと居れば君の温もりが戻ってきたような、そんな気がしたから。 君の代わりのアイツは、どうしようもない嘘つきだ。 甘い口づけも、愛の言葉も全て偽り。 わかってる。 その偽りを求めたのは、私。 わかってる。 禁断の扉を開けたのも、私。 こんな偽りの関係なんて、こんな偽りの幸せなんて。 すぐに崩れてしまう、わかってた。 わかってた。 わかってる、つもりだった。 崩れるのが怖くて。 壊れるのが怖くて。 現実を見なければいけない事が怖くて。 ただひたすらに逃げ続けた。 拒絶されるのが怖くて。 見放されるのが怖くて。 ずっと誰かの愛に触れていたかった。 君の愛の代わりに。 愛されていないと知っている。 知っている、けれど。 私にはもうアイツしか縋る所が無いと知っているからこそ。 アイツはいつも。 甘い嘘で私を騙して傷付ける。 それならば、と。 躍起になって無意味な騙し合いをし続ける私のなんて滑稽なことだろう。 終止符なんていつでも打つことができる。 それなのに。 私はいつまでもこの馬鹿みたいな関係を終える事ができない。 君に焦がれて、君を裏切った。 漠然とした不安と背徳感に駆られて、真夜中に何度も何度も涙を流して懺悔した。 それでも、何も変わらなかったけれど。 今も『虚構』は続いてる。 いつ終わるかもしれない、あやふやな関係。
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