第一章

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そして私が今作成していた書類の最後の文字を打ち終えたのとほぼ同時にカチリ、時計の針が動いて。 フロア一帯に終業時間を知らせる軽快な音楽が流れる。 同僚、上司達が「飲みに行くぞ」と馬鹿騒ぎしているのを尻目に私はふぅと溜息を吐いて、きちんとデータを保存してからパソコンの電源を落とす。 この会社って、かなり律儀だと思うのよね。 わざわざ終業時間を知らせてくれるなんて。 まぁ、こちらとしてはありがたい限りだけど。 ゆっくりと立ち上がって、足元に置いてある自分のバッグに適当にポンポンと荷物を放り込む。 「あれ?弥琴もう帰るの?」 『うん、今日はちょっと急ぎの用事…ってわけでもないんだけど。』 「アハハッ、どっちなのよー? まぁ良いや、どーせ彼氏とラブラブするんだろうし。 じゃーね、弥琴。 また明日ねっ、バイバイ!!」 『だから、違うってばー …じゃーね、バイバイ。』 友人に軽く手を振って、お先に失礼します、と上司に一言挨拶してからフロアを出たと同時に階段を駆け降りる。
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