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「キミが可愛いから?」
「は? 意味分からないけど」
リリーは微笑むと、クルフを下ろした。両頬をつねる。
「その、は? って言うのやめなさいね、ムカつくから。馬鹿にした口調も、おばさんって言うのも」
「い゛た゛い゛、い゛た゛い゛」
クルフはじたばたしてリリーを振り払った。頬をさすっているが、そんなことよりも大怪我していた体の方が痛いだろうに……とリリーは思う。
「キミ、怪我は痛くないの?」
「あぁ、昨夜ヴァンパイアハンターにやられたアレ? 治ったよ。夜だし」
ヴァンパイアハンター……? 治った?
「奴らは場所も年齢も血を吸ったのかどうかさえ関係なく襲ってくるから。特に法王のお膝元だからか、イタリアに来てから数え切れないくらい……昨夜は爺さんに電話してて、油断した」
リリーはクルフの言う事が数%すら理解できなくて言葉に詰まった。
クルフはワンピースの裾を捲くり上げてストールを外す。深かった傷は綺麗に治り、まるで何もなかったようだ。
「キミ……」
「ぼくはヴァンパイア。血なんて吸わないけど」
あまりにもさらっと言うので、信じられなくてリリーはサンマルコ教会の土産物コーナーで買ったロザリオをクルフにちらつかせた。
「……」
クルフは冷たい目でリリー見る。ひきつった笑いを見せた。
「ぼくは教会で暮らしてた事もあるし、そんなの平気だよ」
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