Scene.01 マイグレックヒェン

11/21
前へ
/32ページ
次へ
 ロザリオを引っ込めて、リリーはクルフの手を引く。 「嘘つき。ヴァンパイアなんて実在しないわよ」 「なっ!」  クルフは文句がありそうに不満そうな顔をする。しかし黙ってしまった。 「減らず口はおしまい? キミ、可愛いのに友達いないでしょ? 乱暴してホテルのもの壊したんなら謝りなさいよ。お父さんのところに行くわ」 「……っ! や!!」  クルフは泣き出しそうな顔をする。リリーはいい加減腹が立った。 「私の観光を台なしにしといて、御礼も何もなく嘘話? ヴァンパイアって何よ! じゃあ、キミがヴァンパイアだからヴァチカンに売られるっての!?」  リリーの怒鳴りにクルフは肩をすくめた。そこに神父服を着た若い男性が通り掛かった。 「っ!!」  クルフはその顔を見た途端に逃げ出そうとし、リリーはしっかりと捕まえた。 「逃げる気?」 「あいつ……あいつだ……っ! ぼくを襲ったの……っ!」  クルフはすっかり怯え、神父を指差した。リリーはクルフを捕まえたまま神父を見る。  切れ長の瞳に暗い色の金髪、高い身長にリリーは見とれてしまった。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加