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ロザリオを引っ込めて、リリーはクルフの手を引く。
「嘘つき。ヴァンパイアなんて実在しないわよ」
「なっ!」
クルフは文句がありそうに不満そうな顔をする。しかし黙ってしまった。
「減らず口はおしまい? キミ、可愛いのに友達いないでしょ? 乱暴してホテルのもの壊したんなら謝りなさいよ。お父さんのところに行くわ」
「……っ! や!!」
クルフは泣き出しそうな顔をする。リリーはいい加減腹が立った。
「私の観光を台なしにしといて、御礼も何もなく嘘話? ヴァンパイアって何よ! じゃあ、キミがヴァンパイアだからヴァチカンに売られるっての!?」
リリーの怒鳴りにクルフは肩をすくめた。そこに神父服を着た若い男性が通り掛かった。
「っ!!」
クルフはその顔を見た途端に逃げ出そうとし、リリーはしっかりと捕まえた。
「逃げる気?」
「あいつ……あいつだ……っ! ぼくを襲ったの……っ!」
クルフはすっかり怯え、神父を指差した。リリーはクルフを捕まえたまま神父を見る。
切れ長の瞳に暗い色の金髪、高い身長にリリーは見とれてしまった。
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