10人が本棚に入れています
本棚に追加
「おや、こんばんは」
神父はリリーに微笑み、クルフを見つめる。
「その子は……?」
「あ、迷子です!」
リリーは笑って答え、神父はにっこりと微笑んだ。クルフを優しくなでるが、クルフは震えてリリーにしがみついた。
「この子は私の知り合いの子供です。待ち合わせしていたのです。ほら、おいで、クルフ」
神父はクルフの手を引いて、リリーはクルフを神父の前に突き出した。
「待ち合わせだったの。ちゃんとお父さんのところにも帰るのよ。じゃあね」
クルフは怯え切った目でリリーを見たが、リリーは手を振った。
リリーはクルフが去った後をぼんやり見つめ、ホテルに戻ることにする。
運河の見えるホテルに戻る途中、クルフの事が少し引っ掛かった。仮に、あの子の言うことが全て本当だとするなら、神父に連れて行かれている時の怯えた顔は異常だった。もちろん、本当にヴァンパイアというのなら、関わりたくないというのもある。
「気になる……」
歩きながら呟いた。声に出すと余計に気になる。
「気になる……気になるっ!」
次の瞬間、リリーはクルフが連れていかれた方へと走り出していた。
最初のコメントを投稿しよう!