Scene.01 マイグレックヒェン

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「おや、こんばんは」  神父はリリーに微笑み、クルフを見つめる。 「その子は……?」 「あ、迷子です!」  リリーは笑って答え、神父はにっこりと微笑んだ。クルフを優しくなでるが、クルフは震えてリリーにしがみついた。 「この子は私の知り合いの子供です。待ち合わせしていたのです。ほら、おいで、クルフ」  神父はクルフの手を引いて、リリーはクルフを神父の前に突き出した。 「待ち合わせだったの。ちゃんとお父さんのところにも帰るのよ。じゃあね」  クルフは怯え切った目でリリーを見たが、リリーは手を振った。  リリーはクルフが去った後をぼんやり見つめ、ホテルに戻ることにする。  運河の見えるホテルに戻る途中、クルフの事が少し引っ掛かった。仮に、あの子の言うことが全て本当だとするなら、神父に連れて行かれている時の怯えた顔は異常だった。もちろん、本当にヴァンパイアというのなら、関わりたくないというのもある。 「気になる……」  歩きながら呟いた。声に出すと余計に気になる。 「気になる……気になるっ!」  次の瞬間、リリーはクルフが連れていかれた方へと走り出していた。
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