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クルフは顔を両手で覆い、声を殺して泣いていた。
「なんで……ぼく……死にたくないよ……」
リリーは唇を噛んだ。ヴァンパイアか何だか知らないけれど、どうしてこんなに幼い子供が追い詰められているのか分からない。
嫌味な子だけど、悪い感じはしない。笑顔は可愛いし、なにより……自分にすがってくれた。
突っ立っているだけの自分にひどく腹が立ってくる。
「消えろ!」
神父が叫び、長い棒を振り上げて突き刺そうとすると同時にリリーの身体が自然に動いた。思わず口走る言葉に表情は引きつる。
「美形の人口減らすなぁっ!!」
「……え?」
神父は声を上げたと同時に倒れ込む。リリーの足が神父の頭を蹴り飛ばしていた。薄いレースのスカートは裂けて、張った布で少し足が切れる。
火事場の馬鹿力とはこういう感じなのかも知れない。
「神父のクセに弱い物いじめとかありえない」
蹴られ所が悪かったのか、すっかり気を失っている神父の上に振り回していた棒を投げ付ける。先が尖っていて、濡れていた。
「あ……」
怯え切ったまま、クルフはリリーを見つめている。また、傷だらけになっていた。腕はやけたように手形が付き、目には涙をためている。
「……おいで」
リリーはクルフを抱き寄せた。強張ったままクルフは動かないが、しばらく抱きしめ続ける。
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