Scene.01 マイグレックヒェン

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 クルフは不満そうにしながらも、リリーに手を引かれるまま歩く。 「キミの泊まってるアルシオーネホテルからは少し距離があるけど……夕食を食べたらパスポートとか貰いに行くわ」 「え?」  クルフはリリーを見上げる。リリーは気にせずに続けた。 「私、イタリアに観光に来てるのよ。ここの次は、ヴェローナ、フイレンツェ、サンジミニャーノ、ローマ。キミも行くでしょ?」  クルフは首を傾げ、困ったような顔をする。何が起こっているのか理解できない。 「私、人探しに来てるんだけど、ちょっと見つかりたくない人に見つかったから出直し。でね、キミを私の弟にするわ。紳士に育ててあげる」  リリーはクルフの髪をなでる。子供特有の柔らかい絹のような手触りがした。 「あの……」  クルフの呼びかけに、機嫌の良いリリーはふわりと振り返った。 「お姉ちゃんって呼んでよ。あー……こんなに可愛い弟が出来るなんて、幸せね。人間じゃないなんてこの際どうでもいいわ」 「あのっ!」  クルフはリリーの手を振りほどいて大声を出す。サンマルコ広場で夜景を楽しむ人々がクルフに注目をした。
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