Scene.01 マイグレックヒェン

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「何で、カンツォーネが別料金なわけ!?」  狭い水路をゆったりと進むゴンドラの上で、腰まである金髪を三つ編みにした少女は、横縞の服を着たゴンドラ漕ぎの胸倉を掴んだ。 「ちょ……お客様、ゴンドラの上で暴れないでください!!」  抜けるように青い空、2月のカーニバルの余韻が残る街で、橋の上からピエロの帽子やカーニバルの仮面を持った観光客が見物していた。 「何よ!!」  少女は一喝する。そもそも6人乗りのゴンドラに無理矢理一人で乗ったのだ。行き先やサービスによっても金額が変わり、最初に申し込みする必要がある。 「度が過ぎると、降りてもらいますよ」  漕ぎ手の男性も不機嫌そうに言い、少女はさらに不満そうな顔をして先端にある椅子に座った。 「ここ、ヴェネチアの一階は家賃が安いのですが、現在人口が飽和状態で住めないのですよ。ここの出身者ですら、結婚して実家を出るときは住む場所がありませんから」 「ふーん、そう」  つまらなそうに答える。やりにくそうに男性は続けた。 「たくさんの突起は、ベンチではなくて水位の上がったときに登るところなんです」  反応のない少女に苦笑いしつつ、男性は歌い始めた。ぴくっと反応をする。 「カンツォーネ!?」 「いえ、それは別料金なので、最近流行りのポップスですよ」
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