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目を輝かせた少女は、舌打ちをすると、ぼんやりと水路を眺めた。
狭い水路の横でゴンドラの点検をする人が見える。
不思議なざわめきと、建物に入り込むもっと狭い水路、入口へと水中から続く階段。鳩、ウミネコ。
少女は眩しそうに空を見上げた。
「カーニバルはどうだったの?」
「毎年の事ながら大盛況でした。まだ余韻が残っていますね」
少女は適当に相槌を打つ。ふと橋の上を見ると一人の幼い子供がフラフラしながら歩いていた。
「?」
保護者らしき人はいない。よく見ると、血まみれだ。
「ここでいいわ。ありがと!!」
相手の言葉も聞かずに、少女は船から飛び降りた。
ふわりとした白いレースのスカートが少し水に濡れる。そんな事は気にしている場合ではなかった。
水路に架かる橋の階段を駆け登り、子供に走り寄る。
「ちょっと、キミ!!」
手を伸ばすと同時に、子供は少女に倒れ込んだ。どうやら気を失っているらしい。
服は破れて腕から血が流れていた。足も、半ズボンの下は傷だらけで靴下やスニーカーは元の色が分からないほどだ。そして、苦しそうな青白い顔は、まるで天使のように整っている。
何故か……キレイだと……思った。
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