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「とりあえず、私の泊まっているホテルに来なさい。あの人とは違うところだから」
リリーはそう言うと、鞄から携帯電話を取り出した。
「私よ、今から子供を連れて行くけど、傷だらけなの。身長は約4フィート。体重は……3ストーンも無い位。服を用意しておいて。男の子よ」
「ぷっ」
クルフが笑うので、電話を切った後リリーはにらみつけた。
「何? 体重がストーンって。ぼくの体重は16キロだよ。身長は120センチ」
「痩せすぎ。子供はちょっと丸いくらいが可愛いわよ」
リリーはそっぽを向くとクルフを抱え上げた。クルフはじたばたと暴れるが、すたすたと歩き出した。
「司教の奴……嘘つき」
クルフは忌ま忌ましそうに呟き、教会を一瞥する。その言葉にリリーはぞっとするものを感じた。
「ねぇ、あの人は父親なんでしょ? 何で逃げるの?」
「父親……ねぇ。養父だけど。あいつはぼくをヴァチカンに売り飛ばしに来たんだ。そんなところに売られるなんて、地獄だよ」
ヴァチカン……法王の居る世界最小の国。キリスト教の最高峰のはずだ。
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