主人公鉄則7「諦めが悪い」

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「ちょっと鈴(りん)ー、いつまでもそんなところで拗ねてないでこっちに来なさい」 「そうだぞー、鈴(りん)ちゃん。お姉様の仰ることを聞けー。こっちに来て隣に座れよー。こんな麗しいお姉様を煩わせるなんて弟として……いやむしろ男として間違ってるぞー」 「そうよー。橘くんの言う通りよ。麗しのお姉様の言うことはちゃんと聞きなさーい。あんたと違って橘くんはよくわかってるわ」 「いやぁ、それほどでもありますけどー」 ……ッなんなんだこの会話は!! 扉の向こうから聞こえる橘と響の声に、扉を背にしゃがみこんだまま、舌を打つ。 予定外の三大問題児(トラブルメーカー)の訪問によって崩壊した鈴斗の平穏な休日は、予想外の実姉の裏切りにより今現在も、ちゃくちゃくと侵略されている真っ最中だ。 三大問題児を伴った響によってリビングへと連れ込まれ、部屋への逃走経路を絶たれた彼は、あえなく隣接しているダイニングキッチンへと逃げ込んだ。 そしてこれ以上の侵攻を防ぐべく、背で扉を抑え閉じこもっているのが現状、なのだが。 「いやー、それにしてもお姉様も美しい。鈴ちゃんはお姉様似ですね。二人ともそっくりだけど、でもどっちかというと鈴ちゃんは可憐系で、お姉様は美人系?系統が違うっていうか」 「ありがとう、よく言われるわ。--あら、鈴斗の顔見たことあるのね。よく似てるでしょう?でも貴方の言う通り、やっぱり系統が違うみたいなのよねー。あの子はやっぱり"美人"っていうより"可愛い"って感じで。なのにあの子ったらあんなもっさい恰好してぜんっぜん可愛くないったら」 ……ッだっからなんなんだよ!さっきからお前らのその会話の弾み具合は!!なんの話してんだ!なんの!!お前らテンポが噛み合いすぎなんだよ!おかしいだろ!? 何がって、先程から聞こえてくる会話がおかしすぎる。 橘!てめぇはお姉様とか呼ぶな!どさくさにまぎれて口説いてんじゃねぇ!誰が可憐系だ、ふざけんな気色悪い!!系統とか意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇ!!そもそも似てないっつの!! んでもって姉貴!お前もなにさらっと受け流してんだ!"美人"だとか"可愛い"とかなんの話してんだアホか!!もさくて悪かったなほっとけ!!ていうかだから似てねぇっつってんだろ!! 内心で激しくつっこむも、想定外の橘と響の意気投合に動揺を隠せない。
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