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街中の人混みの中、狭い路地の壁を背に立ち、周囲を見渡す。
「――……なんでこんなことに……」
気配を消すことに存分に神経を集中させることで、自分の存在を隠しながら、俺は思わず呟いた。
この状況を一言で説明するとすれば、『変態共と鬼ごっこ中だから』である。
俺は舌打ちをしたくなるのを必死に堪えつつ、つい先刻までの、我を見失っていた自分を心底呪った。
『このキチガイ共がっ!』
怒りの感情に任せて叫んだ俺に、それまで黙っていた如月が小さくため息を吐いた。
『……宮澤、こいつらはキチガイなんて大層なものじゃなくて、ただのアホなんだ。許してやってくれ』
代わりに俺が説明するから。
そう言って沈痛な面持ちで、額を片手で押さえた如月は、もう一度深くため息を吐いてから、口を開いた。
説明の間々のアホ共の茶々入れに、非常に神経を逆撫でされたが、如月の説明は水城たちよりは格段に丁寧だった。
ただし、その内容はどちらにせよ無茶苦茶なものであったし、如月の表情もだんだんと獲物をいたぶる愉しげなものへと変わっていったのだが。
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