391人が本棚に入れています
本棚に追加
/145ページ
「――…で・も・ね?」
囁くと同時にギリッと耳をつねられる。
「……っ……!」
「学校をサボったのは頂けないわ。」
痛いと口にするよりも早く、案外すんなりと手を離した響からすばやく距離を取って、両手でつねられた耳を押さえる。
不満をこめて視線をあげれば、鈴斗の予想に反して彼女は怒りを治めていた。そして小さな溜め息と共に口を開く。
「仕方ないから今日はもう私から学校に欠席連絡をしとくわ。そのかわり、いくら面倒くさくても、もう学校サボるのはなしよ。」
「そうだ!響の言う通りだぞ!」
響の真面目な説教を切り裂いて大きな声が響く。その声の主が倒れていたはずの場所を見ればいつの間にか鐘は立ち上がっていた。
「うわ、もう復活しやがった。この汚物」
「本当、あのまま自然に帰れば良かったのに」
弟と妹のそんな言葉は聞こえなかったかのように彼は、鈴(すず)!と大声で弟を呼ぶ。
「学校にはちゃんと行かないと駄目だ!将来困るぞ!」
「お前にだけは言われたくねぇよ」
真面目な顔をして鐘が叫んだ言葉は、すげなく彼の弟によって打ち返された。
「酷い!兄ちゃんの言うことちゃんと聞きなさい!!」
「黙れニート」
若干の涙目で主張を続ける兄を、鈴斗は軽蔑の眼差しとともに一言で切り捨て視線をそらす。
「……っ!……っお前はいつからそんな酷い子になったんだぁぁ!兄ちゃんは悲しいっ!!」
うわぁああっと床に崩れおち、声を響かせて泣くそれを見下ろし顔をしかめる。
……汚ね……。
視線の先で、鐘は顔から出るもの全てを出していた。
「昔は口汚く罵る腹黒ではあったけど、それでも見た目は可愛かったのに!今じゃそんな髪はボサボサの延び放題で、眼鏡と髪が邪魔で可愛い顔が見えないじゃないか!!」
「それじゃ見た目だけで中身変わってねぇじゃねぇか。不満なのそっちかよ。前後の言葉繋がってねぇし」
「そんなことはどうでもいい!昔の可愛い鈴に戻ってくれ!!いや今ももちろん可愛いがっ!」
足にしがみつかれ、カッと目を見開いて力説する兄の姿に、弟は心底ドン引きした。
最初のコメントを投稿しよう!