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言い訳のように脳内で巡る言葉に、一人ひきつった顔で頷き納得させる。
そうとなれば、今のうちにこの場から逃げるべきだな。
ならば、と逃走経路を確認するために再び意識を彼らに向けた瞬間、微かな金属音が耳に届いた。
……なんだ……?
サッと視線を走らせて様子を探る。
そして驚愕に目を見開いた。
「……――!!」
あいつ……っ!!
視界に入った乱闘の隅、三人の男を相手に闘う水城の背後で、リーダーらしき男が、開閉式の小型ナイフを握っていた。
――……馬鹿かあの男……っ!!喧嘩ごときで刃物出すなんて……っ
血走った目をして如月を睨む男に嫌な予感がとまらない。
慌てて橘と如月を見るが二人もそれぞれ二人ずつを相手に闘っていて気づく様子はない。
そもそも例え相手が雑魚だろうと多人数を相手に他人の様子を伺うような余裕は彼らにはないだろう。
一番の戦闘能力を持つ水城ですら、未だに男の握った刃物には気づいていない。
これはさすがに助けないとヤバいんじゃないか?
ツッと冷たい汗が背中を流れる。
――だけど、でも。
思考がぐるぐると巡り判断力が鈍る。
しかし迷う時間はなく、男が刃物を握る手に力をこめて構えた。
――――――っ……!!
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