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男が怒声と共に、水城へと駆け出す。
「…………!」
その声に水城が漸く刃物を握る男の存在に気付く。しかし体勢が整わず反応が遅れた。
「拓哉……っ!!」
橘と如月も驚愕に目を見開き、慌てて水城へと駆け出す。だけど、これも間に合いそうにない。
それらの動きを全てスローモーションのように感じる中、一瞬の内に様々な想いが交錯する。
水城ならあれくらい避けられるだろう。
――無理だ間に合わない。
助ける必要なんてない。
――そんなこと関係ない。
何故俺が助けにいかなきゃいけないんだ。
――そんなの……だって……。
面倒なことに巻き込まれるなんて死んでもごめんだ。
――……そう、だ、死んでも……死……?
放っておけばいい。
――――死んでしまうかもしれないのに――――?
その瞬間、自然と身体が動いた。
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