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――馬鹿じゃないのか、俺。
助けにいって、何になる?
面倒なことになると解ってるのに、なんで――……
冷めた頭の中、冷静に考える。
だけど、そんな考えに反して足は勝手に地を蹴った。身体を背後の塀に乗り上げ、瞬時に塀を勢いよく蹴りつける。
宙に身体を踊らせた勢いをそのままに、今まさに水城を斬りつけようとする男の顔面へと振り上げた足を叩きつけた。
「鈴斗っ!!」
叫ぶ橘たちの声を耳が拾いあげる。しかしそれに振り向くことをせずに、視線はただ男を静かに見据えていた。
「……ッ……がはっ……!!」
ガッという大きな音と共に男の呻き声が響き、ミシリ、と蹴りつけた足に男の骨が微かに軋む感触が伝わる。
……下種が。手加減してやったんだ、ありがたく思えよ。
吹き飛び、地面に倒れゆく男を冷たく無表情に見下ろして、その場に難なく着地した。
そして驚愕に身を固める残った周りの男たちを順にゆっくりと見渡す。
驚きによってか、それとも恐怖によってだろうか。顔を微かに青く染めた男たちを見て、フッと口元に笑みをしく。
……何を驚く?何に恐怖する?先に刃を向けたのはそっちだろう?
「てめぇらが呼んだんだろ?」
せっかく出てきてやったんだ。しっかり相手してくれよ?
眼鏡と前髪の奥、見開いた瞳で口元の笑みを深め、硬直した男たちに囁きかけると同時、逃げ出す男たちに向かって地を蹴った。
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