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「五月蝿い。」
鈴斗が顔をひきつらせ足元のそれを見下ろしていると、勢いよく降り下ろされた響の踵が、鐘の頭にめり込んだ。
ゴッ!!
「ぐっ……」
鈍い音の数瞬後、彼の身体がぐらりと傾く。
「少し黙ってなさい。」
響のその一言とともに背中を踏みつけられた鐘は、意識を手放し床に倒れ伏した。
……さらば愚兄よ……安らかに……
「鈴(りん)?」
内心で密やかに黙祷を捧げていた鈴斗も、静かに名前を呼ばれ、思わず微かに肩が震える。
本気でキレた彼女に勝てる者は存在しないだろう。--少なくとも、この宮澤家においては。
「……はい……。」
「私はこれから学校に電話してくるわ。話の続きはその後よ。とりあえず"これ"とそこのソファーで待ってなさい。」
“これ”と言いつつぐりぐりと足元のものを踏みつける彼女に逆らうという選択肢は、この時の鈴斗には無かった。
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