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「捕まえた」
ぞっとする悪寒と共に湧き上がる嫌な予感。
縋るような思いで後ろを振り向けば、俺を羽交い絞めする腕の主である水城が綺麗に微笑んでいる。
……ということは。
ぎぎぎ、とゆっくり横を振り向けば、にっこりといい笑みを浮かべる橘と視線がかち合った。
「……っ……」
思わず息をつめ、顔を強張らせた俺に、追い打ちをかけるように背後から水城が声をかける。
「助けてくれて、どうもありがとう」
「鈴ちゃんが俺たちを助けてくれるなんて感激だぞ」
橘も便乗する形での感謝の言葉とは裏腹に、羽交い絞めにする水城の腕の力は緩まない。
それどころか橘までもが、俺の肩をしっかりと掴む形で押さえつけた。
「さっきも言った通りお前らの為じゃねぇよ」
「つれないこというなよ。それに、俺たちの為じゃないとしても、鈴ちゃんのおかげで助かったのは事実だ」
「……っそう思うならさっさと離せ……!!」
声を低く、唸るように叫ぶ。しかし、二人はそれを全く意に介する様子なく、楽しそうに笑うだけだった。
再度怒鳴ろうと俺が口を開くより先に、橘が口を開く。
「いやぁ―……にしてもやっぱり嬉しいなぁ。まさか鈴ちゃんが本当に“わざわざ”俺たちを助けに“出てきて”くれるなんて思わなかったぞ」
「……っだから違うっつってん……っ――」
――――…………?――――待て、何かおかしくないか……?
橘の言葉に感じる微かな違和感に、言葉を止める。
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