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「そう、残念だけど今回は間違いなく君の負けだよ。君は諦めるしかないんだ、絶対にね」
橘と同じように水城が強気に笑って言った。
「…………っ…………」
あまりにも断定的な彼らの言い方に思わず怯み、言葉を返せない。
その間にも二人は言葉を続ける。
「君は卑怯だと言ったけど、卑怯な手だとしてそれの何が悪いんだい?今回の勝負で僕達のルールはただ一つ、“決められた範囲内で、制限時間内にお前を捕まえ”れば勝ち。それだけだよ」
「その通り。反則なんてないし、むしろそこはこんな卑怯な手を使ってでもお前と友達になりたかったっていう、俺達の一途な想いを認めて欲しいところだぞ」
「…………っ」
この勝負、俺達の勝ちだろう?ーーなぁ?鈴ちゃん。
にっと笑みを浮かべた橘が、首を傾げて俺の顔をのぞき込んだ。
「……ま、そういうことだ」
背後で如月がそう呟く。
……っ……こいつら…………っ
俺はふるふると怒りに震える肩をそのままに、地面を睨みつけていた視線を勢いよくあげて、ギッと目の前の橘を睨みつける。決して半泣きなんかじゃない。
ーーそしてーー、叫んだ。……叫ぶしか、できなかった。
「……っこの……っ……腐れ外道共がぁぁあーーっ!!!!」
「ーー……悠樹お言うとおり、押しに弱いんだなー……。…………本当、お人好しな奴……」
俺の心の底からの叫びが、周囲に響き渡る中、後ろで小さく呟いた如月の言葉は、俺の耳に届くことなく儚く空気に消えた。
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