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口に出すのは馬鹿がやることだ。
だんまりを決め込む俺に、姉貴は溜息を吐いた。
「…………まぁいいわ。今のは見逃してあげる」
本題はここからよ。
その一言に安堵しつつ、姉貴のいう本題とやらを考える。
ーー……どれのことだ。
いったい何がバレたのだろうかという思案を、表情には出さずに姉貴を見上げた。
「改まって何だよ?」
「……あなた、昨日帰ってきてから様子が変だったわよね」
ーー…………昨、日……?
ギクリ、と身体が強ばるのを自覚する。
……昨日…………何かあったか?
それとは真逆に脳は何かを思い出すことを拒否している。
……いや、思い出すも何も、昨日は何もなかったはずだ。
「……別にそんなことないだろ」
姉貴の気のせいであってくれ、むしろその思い出してはいけない“何か”が夢であってくれ、と縋る思いで言葉を返す。
しかし、無情にもその思いはすぐさま姉貴に叩き潰された。
「いいえ。明らかに様子がおかしかったわよ。私だけじゃなくて鐘だって気づいてたもの」
さぁ、何があったの?何かあったなら今すぐ白状しなさい。
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