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階下に着き、一つ大きなため息を吐き出してから、渋々と玄関に向かう。
あー……めんどくせぇ……
今、他人に愛想笑いをする気力はなく、しかし素で出る訳にもいかず、このまま来訪人が諦めるまで居留守を使うかという思考が頭を掠める。
それと同時に、見計らったようなタイミングでもう一度インターホンが鳴り響く。
「……………。」
わぁったよ、出りゃいいんだろ!出てやらぁ!!
まるで、先ほどの思考を責めるかのようなそれに、苛立ち舌を打ちながら、玄関のドアへと足を進めた。
カチリ、と鍵を開ける瞬間に、表情と声を“僕”に切り替える。
「はーい……すみません、お待たせしました」
少し小さめの大人しい声で、そう呟きながら、ひょっこりと顔を出した。
次の瞬間、俺史上最速のスピードで顔をひっこめ、勢いよく扉を閉める。扉がぶわっと風を巻き起こした。
しかし俺の意に反して、ガッという鈍い音とともに扉は閉まる直前でせき止められた。
扉が閉まらない原因ーー……無理矢理ねじ込まれた足を辿り、恐る恐る上へと巡らせた視線の先で、橘がにこやかに微笑んだ。
「りーんーちゃーん!あっそびましょー!」
「お断りします!!」
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