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舌を打ち、忌々しそうに二人を睨みつける。
「開き直ってんじゃねぇよ。少しは気にしろっての。それにな、学校にトラブルメーカーはもう十分足りてんだよ。これ以上は必要ないね」
兄姉の態度にはきっちりと釘をさしておく。たとえ全く効果がなく、まさしく"糠に釘"であったとしても。
そして、鈴斗は校内で耳にした"噂"を思い起こし、呆れた表情を浮かべた。
"あの噂"に対抗できるほどのトラブルを起こしたつもりは毛頭ない。--少なくとも、高校に入学してからは。……表だっては、ない。はず。
少々自信に欠ける鈴斗の内心など兄姉にはお見通しであったが、彼らはそこには触れずにおいてやった。
「必要不必要の問題じゃないでしょう」
しょうがない、と言わんばかりに響が呆れた溜息を零す。
「俺が不必要だっつったら不必要なんだよ」
兄姉のことをとやかく言えないほどの横柄さで、鈴斗はばっさりと彼女の反論を切り捨てた。
直後、それに対して「相変わらずお前は響に似て暴君だなぁ」なんて能天気に笑った鐘に響の蹴りがとぶ。
ゴシャァッと激しい音とともに、もろに顔で蹴りを受けとった鐘が床に倒れ伏した。
――……馬鹿。余計なこと言うから……。
鈴斗は憐むような目でそれを見届け、静かに視線をそらす。
「何か言った?」
「い……いいえ……」
にっこりと笑みを浮かべて見下ろす響に、鐘はひきつった笑みを返し、ぷるぷると首を振った。
「そう。……それより鈴、さっきの学校のトラブルメーカーってのは?」
それに笑顔のまま頷き、響は何事もなかったように視線と話題を鈴斗へと戻した。
「……ぁ、……ああ……。うちの学校に有名な変わり者が三人居てな、そいつらトラブルばっかり起こしてるんだよ」
怒りの矛先がこちらに向かないか、巻き込まれやしないかと、内心肝を冷やしつつ、鈴斗はなんとか彼女の問いに答える。
答えながらも、多少引け腰になってしまうのは仕方ないと思う。
ひきつる弟の顔には触れずに、彼女はわざとらしく目を見開いた。
「あんた以外にあと二人もトラブルメーカーがいるのっ!」
「俺は入ってねぇよ!トラブルメーカーじゃないっつってんだろ!!」
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