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遠くに思考をとばして可愛い可愛いと騒いでいる兄貴の袖をクイッと引っ張る。
「鐘兄、僕お出掛けしたいんだけど。」
キュンっ
俯いたまま呟けば、聞こえるはずのない音が聞こえた。
「ちょっ!袖クイッて!袖クイッて!可愛いすぎるんだけど!――……って、……いやいやいや」
はわわわと意味の解らない擬音を撒き散らしつつ頬を紅潮させていたが、すぐさま彼は我を取り戻した。
チッ、もうひとおしか。
「兄ちゃんもな、可愛いお前の願いは何でも叶えてやりたい。叶えてやりたいんだがな、逆らってはいけないものというものがあって…」
「――……だめ?」
声を震わせれば兄貴はあからさまに動揺する。
「いや……だって命令無視したら響が怖いし。いやいや、もちろんお前のためなら兄ちゃん命も捧げられるけどな?……でもあんな酷い死に方は出来れば一生したくないというか……」
よし、俺の為に命捧げろ。
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