プロローグ

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さて、助けが入る可能性がゼロであることを証明したところで、現在考えるべきは“これからどうするか”だ。 通常ならば大した金額は持ってないし、面倒臭いからちゃっちゃと適当に金を渡しちゃって、軽く何発か殴られて「はい、さようなら」なのだが。今日はそういうわけにもいかない。 (……今日だけは絶対に渡せない) 本日の"彼"はとある"重大な事情(ミッション)"でそれ相応の額を持っており、断じてこれを失うわけにはいかなかった。 それで最初の“どうするか”に戻るわけだが。 「てめえ痛い目見なきゃわかんねぇみたいだな、あぁ?」 どんっと右肩を押され壁に背中があたる。 (うっさいな痛い目見なきゃわかんないのはお前らだろうが。) またも面倒な奴らに絡まれたことに苛立ち、"彼"はつい零れそうになる舌打ちを堪えた。 そして代わりに、消えそうに小さな震える声で言う。 「ぁ……あの……っ……今日……っお金……持って……なくて…………」 言葉じりはもはや聞こえないくらい小さく、掠れて空気に消えた。
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