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馬鹿の顔を見たくないがゆえに思考をとばしていたというのに、その馬鹿自身がよくも邪魔をしてくれたな。
思わず睨み付けるように視線をあげる。
といっても前髪と眼鏡越し、しかもフードで影になってちゃわかんないだろうけど。
「聞いてんのか!!」
誰もお前らの鳴き声なんか好んで聞きゃしねぇよ。
――…あー…もう、面倒くせぇ……
ギャーギャーと喚く奴らを無視して溜め息を吐く。
四人を相手にするのなんか楽勝で、状況も人目がない路地裏なのでさっさと全員のしたって構わないんだが。
手元には心待ちにしていた何より大切なゲーム。
これに傷が入るのは死んでも嫌だ。
チラリと奴らを順繰りに見渡せば全員が全員、ガタイが良く――…まぁ、横に幅をとってるわけだ。
どう考えても身軽ではないな。―…というわけで。
面倒だし、逃げるが勝ち。
そう判断をした瞬間に、しっかりと片手でゲームを握り、目の前の男の急所に瞬時に蹴りを喰らわした。
「――…ぐ…っ…!!」
男がドッと重い音とともに反対側の壁まで吹き飛ぶ。それに驚き、目を見開いた残りの三人がそちらに気をとられている間に、素早く地面を蹴りあげた。
勢いよく跳ねあげ、逆立つように回転させた身体をそのままに、背にしていた塀へと軽く空いてる片手をつく。
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