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しかしその涙声はきちんと伝わったらしく、男たちはニヤニヤと下品な笑みを浮かべた。
「嘘つけよ。少しくらいは入ってんだろ?」
「もう小銭でも全然かまわねーからさー、殴られたくないならさっさと財布出せや。」
(……面倒くせーな、しつこいんだよクソ。)
だが、実際どうするか。
"彼"は思考を巡らせつつ、ちらりと周囲を見渡した。
通行人はだいぶ疎らになっている。とはいえここは市街地であり、もちろん人目がある。
(……仕方ないか。)
内心大きく溜め息を吐き、男たちの隙をついてパッと駆け出した。
「……っ!チッ……!」
「てめっ……待てこのっ!」
当然、男たちは"彼"の後を追う。それを確認しつつ、"彼"は路地へと駆け込んだ。
そして頭の中で描いた目的地を目指し、右に左にと走り続ける。
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