プロローグ

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人気が全くなくなり、道も狭くなってきた頃。三方全てが高い壁に囲まれた行き止まりへと辿り着く。 足をとめて振り返った"彼"に、肩で息をする男たちが荒く喉を鳴らしつつ笑った。 「…っは…馬鹿が!…やっと…追いついたぜ…。」 「無駄に…っ走らせやがって……覚悟は…、できてん、だろうな…。」 (いや、自分で止まったんだっつの。) いい加減気づけよ、馬鹿共。 男たちの言葉に、"彼"は今度こそ大きく溜め息を零した。そして嘲笑をこめてはっきりと告げる。 「馬鹿はお前らだよ、この屑。」 「っ……!?」 (あーあー、なんともまぁ様式美な反応しやがって。つまんねぇの。) いきなり豹変した“気弱そうな男”に目を見開いて驚く男たちの様を、思いっきり鼻で嗤う。 「随分苦しそうだけど大丈夫?」 "彼"はわざとらしく首を傾げて尋ねた。 目元は長く伸ばされた髪と眼鏡に隔たれて見えないだろうが、歪めた口元から、男たちは自分たちがコケにされたことだけは理解したようだ。
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