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「お前も人のこと言えねぇだろ。案の定サボりで街中にいたし」
「うるせぇ、俺はいいんだよ」
まともなこと言ってんなよ変態のくせに。
無駄な能力を無駄なことに使うな。
自分の計算外のやり手に苛立ち大きく舌をうつ。
とりあえず俺が目をつけられた理由は解った。こいつがそこら辺のただの雑魚と違うってこともな。
「それで?俺を探して見つけて……その次どうすんだよ」
「何度も言ってるだろ、口説きに来たって。――……俺の“恋人”になれ」
「いくら口説かれたって死んでもお断りだよっ!」
本気でそんなことのために来やがったのか。馬鹿かお前。さっさと帰れ。
つーかお前の“恋人”何人目だよ。
理解できない思考に増す苛立ちを堪えつつ橘の言葉を切り捨てる。
そんな俺にニッと橘が笑みを深めて言った。
「拒否権はないはずだぞ」
その至極愉しそうな笑みを見た瞬間、この後に続く言葉が容易に想像できた。
それに伴い先程までの苛立ちがスッと引く。代わりに、沸き上がる別の感情。
沸き上がるそれに流されるまま、俺は静かに右足を後ろにひく。
「理由は知らねぇがお前、本性がばれたらまずいみたいだしな。“このこと”を言いふらされたくなけりゃお前は俺に―…」
逆らえないだろ?
橘がその言葉を紡ぎおわるより早く、橘の頬を掠めた俺の足が彼の背後の電柱にめり込んだ。
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