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ドゴォッ!!
ヒュッと空気を切る音の微かに後、重い音が響き、へこんだ電柱からバラバラとコンクリートの破片が粉のように舞い落ちる。
「――……っ」
橘が驚き息をつめる。
めり込んだ足をそのままに、俺は怒りに見開いた瞳で、きつく橘を睨みあげた。
「――――――やれるもんならやってみろよ。その前にてめぇのその口、二度と開かなくしてやる」
つ、と橘の頬を一つ、汗が流れる。驚愕に目を見開いている彼を睨み付けたたまま、しばし沈黙が続いた。
暫時、視線を橘から外し顔を俯けたあと、ふと一つ息を吐き、荒立つ感情を落ち着かせる。
足をゆっくりとおろし、そして口を開いた。
「――俺がお前に…なんだって?」
静かな声で問う。眼鏡超しに視線を合わせてニコリと綺麗に笑いかければ、橘が顔をひきつらせて曖昧に笑みを返した。
「残念だけどな、そんな心配はいらないんだよ。だって――…お前は“言えない”もんな?」
小首を傾げてそう笑いかけるとともに、スッと拳を握った右腕を高く持ち上げる。
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