391人が本棚に入れています
本棚に追加
―…誰か居ると思ったが……こいつか。
先程、此方に近づく気配に気付いていたため、驚きはしなかったが、それはあくまで“俺”の話である。
「―わ…っ!ごっごめんなさいっ」
“僕”として不自然でないように軽く驚きを見せ、慌てて身をひいた。
後ろで橘がそれを面白そうに笑ったのが気配で伝わる。
うぜぇ。
一つ舌をうち背後を一瞬睨み付け、すぐに目の前の男に視線を戻した。
――……どうせ橘の関係者だろう。
その予想を裏切らず、かの男は俺の背後、橘へと視線を向けて笑った。
「振られちゃったね、悠樹。珍しい」
チラリと横目で橘を見れば、こちらへと歩みよりながら橘はその男に不機嫌そうに言葉を反した。
「遅ぇぞ、拓哉(たくや)。お前のせいで断られたじゃねぇか、この俺が。二度も!」
――……やっぱりな。たぶんこいつも、有名人(トラブルメーカー)の一人だ。
「たまにはいいんじゃない?いつも調子に乗ってるんだから。っていうかお前ね、誰のせいで遅くなったと思ってんの?」
「はぁ?うるせぇよ。もっと早く来い」
最初のコメントを投稿しよう!