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目の前の男と、それに向き合うように俺の背後に立つ橘。軽口を叩きあう二人の間に挟まれる形になり顔をしかめる。
チッ……逃げるタイミングを失ったな。
内心舌をうちつつ一度心を落ち着かせ、冷静に思考を巡らす。
最初から感じていた違和感。――……この場を俺と橘以外“まったく”人が通らなかった。
今の会話から考えて十中八九、この男によるもので間違いないだろう。
その手段は解らないが、橘の仲間ならば近付かないに越したことはない。
それに、噂が確かならこいつは厄介だ。
逃げるなら今しかない。
そう考え、気配を消し、言い合いを続けている二人の間からそっと抜け出す。
男の横を通りすぎようとした瞬間、彼の拳が目の前を勢いよく過った。
「……っ!!」
ヒュッと眼前を掠めるそれを咄嗟に後ろに仰け反り避ける。
――っ……しまった…っ!
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