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「なめてんのかてめぇっ!」
「さっさと財布出せっつってんだろうが!!」
男たちが羞恥と怒りに狂い、吠えた。
そんな時でさえも最初から最後まで変わり映えしなかった彼らの発言から、“おつむ”の弱さが伺い知れる。
"彼"は心底憐れんだ。男たちの可哀想な脳みそを。
そこへ男の一人が"彼"の鞄に手を伸ばした。男の手が鞄に触れかけたその瞬間、"彼"の脳内から極小の憐れみは掻き消えた。
「俺のゲーム代に触んじゃねぇよこのカス!!」
足を振り上げ男の横っ面へと叩きつける。
ガツッと派手な音を立て勢いよく頭から壁へとつっこんだ男は、そのままずるりと地面に落ちた。
「なっ……!?…なっ…!?」
あまりにも予想外の展開だったのだろう。残った男が驚愕のあまり、激しく動揺する。
「ど…っ…どうなってんだよ……っ!?」
訳が解らないといったように叫ぶ男を眼鏡越しに一瞥し、"彼"は何度目かになる大きな溜め息を零した。
(ほんっと、頭悪……)
呆れも憐れみも通り越して、逆にこっちが動揺するっての。
「まだ分かんない?」
仕方ねぇなぁ、と言葉を続けた"彼"が、男の前まで歩みを進める。
「じゃぁヒントをあげよう。」
そして唇に人差し指をあて、にっこりと笑った。
――――追いかけていたお前らは息切れしたのに、逃げた俺の息が切れていなかったのは何故でしょうか?
「お前ら始めっからまんまと誘いこまれたんだよ。」
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